遠藤渡米とワールドカップ開幕戦と日本人の英語

ワールドカップサッカーが始まりました。そして、UDC会員の遠藤くんが渡米しました。 昨日の日本代表は残念でしたが、開幕戦の審判を日本のクルーが務めたというのは同じOFFICIALとしてとても誇らしいことです。私は西村さんと同学年で、すごいなと思いました。いつかMLBのワールドシリーズの舞台にも日本人が上がってほしいものです。 PKで失点したクロアチアの監督が試合後に不満をぶちまけましたが、このようなことはスポーツが違っても、審判を務める以上避けては通れないことです。批判を受けるのも仕事の内です。日本の野球の審判に欠けているのはセ・リーグにいた頃の自分がまさにそうだったのですが、「何があっても仕切るのは自分だ」という覚悟だと思います。審判である自分の直感で試合を進めていくことがルールによって託されているのですから、腹をくくるしかないのです。審判の評価は現場に出ている審判の仕事ではなく、第三者が行うことで、必ずしも報われない部分もありそれが審判の仕事の難しさでもあります。私も米国の最後のシーズンはリーグ会長からミラーパークでの試合を任され、オールスターにもチャンピオンシップシリーズにも使ってもらったのに、シーズン後にPBUCから解雇通知を受け取りました。悔いはないですが、やり切れなさは今でも拭いきれません。でもそれが審判という仕事の性質です。 ワールドカップの話に戻すと、私がカチンときたのは、クロアチアのDFの選手が西村さんの英語力についてコメントしていたことです。 http://www.zakzak.co.jp/sports/soccer/news/20140615/soc1406151651005-n1.htm クロアチア人も日本人も英語は母国語ではないですから、私が彼(DF)に問いたいのは、「あなたが西村さんに質問した英語はどうだったの?(西村さんにわかるような英語で話したのか?)」ということです。西村さんにお会いしたこともないですし、その立場にもないので推測になってしまいますが、開幕戦の審判に選ばれるような審判が、英語で話しかけれて日本語でしか応対できないなんてことは常識で考えてあり得ないですよね。つまり、私は西村さんは英語で回頭したもののクロアチアのDFには分かってもらえず、あるいは、そもそもクロアチアのDFの英語も西村さんの理解の範疇を超えるものだったのではないか、というのが私の推理です。 お互いに母国語でない英語での意思疎通ですから、すんなり行かないのが当たり前だと思います。コミュニケーションが成立していないとしたら、相互関係である以上、どちらか一方の英語力を責められるのはおかしいと私は思います。一つの言い回しで分かって貰えなかったら、もっと平易な表現で言い直したり、ゆっくり大きな声で言い直すのが国際語としての英語での常識だと思います。満員のスタジアムでは、大歓声で普通の会話も難しいと思われるので尚更です。DFの選手にそのような努力があったかどうかわかりませんが、クロアチア語と英語が同じインド・ヨーロッパ語族に属しているのに対し、日本語は極東アジアの孤立言語です。だからといって、上から目線で「国際審判」に向かって英語ができないとケチをつけるなんていうのは失礼だとむかっ腹を立てているわけです。 私の解雇通知にも英語力について十分でないとの記述が書かれていましたが、マイナー・リーグの現場では、アメリカ人・カナダ人だけでなく、プエルトリコ、メキシコ、ドミニカ、ベネズエラ、オランダ領キュラソー島、台湾、韓国、日本等々の様々な地域から監督、コーチ、選手、審判が集まってきているわけです。そこの全員が標準アメリカ英語を話すことができているかといったら否です。(そもそもアメリカでも南部出身の方の英語は「標準アメリカ英語」でない場合もあります。)それぞれの母国語の訛りを引きずった英語を話しているのです。私は3年目以降のシーズンで現場で英語で苦労したことはないと断言できますが、年に一度か二度しか会わないスーパーバイザーには私の英語「ジャパングリッシュ」は聞き取りにくかったようです。 話はスポーツの審判に限ったことでなくなってしまいますが、米国では、ヒスパニック系の住民が増えたので、スペイン語訛りの英語が市民権を得たというか、標準アメリカ英語の話者がスペイン語訛り・スペイン語混成英語(俗に「スパングリッシュ」などと呼ばれます)に慣れたために、意思の疎通ができるようになったとも言えます。 シンガポールの人たちが話す英語も「シングリッシュ」というかなりの曲者ですし、インド人の英語、「ヒングリッシュ」も独特です。彼らは全く気にせず使った結果、英語の一形態として認知され、コミュニケーションは可能なわけです。 残念ながら、日本人が外国語として必死で学習した英語「ジャパングリッシュ」は、そこまで認知されていません。第二言語の臨界期(16歳位?)を過ぎてからでは、発音や流暢さにおいて、いわゆるネイティブスピーカーに追いつくことはできないと言われています。 ですから昨日渡米した遠藤くんの英語も「ジャパングリッシュ」にならざるを得ません。標準アメリカ英語話者に慣れてもらうまでは時間がかかると思います。そこで怯まずに「理解できない相手が悪い」くらいの態度で、自己主張してきてほしいなと思います。遠藤くんだけではなく、日本人は完璧主義者でシャイな傾向があるので、「ジャパングリッシュ」を話すことを避けてきたがゆえに、国際社会でそれに慣れてもらえないという悪循環が続いてきたのではないでしょうか? 願わくは、MiLB/MLBのスーパーバイザーにも「ジャパングリッシュ」を理解させ、将来はワールドシリーズの舞台に立ってほしいと心から願っています。 我々も、発音や流暢さなど細部に囚われず、国際社会に英語で発信していく必要があると思います。 濱野