【第118回】打球に走者が当たる(ミドル)

ルール改正により、ルール・クイズ記事投稿時とはルールが変更されている場合がございます。
最新のルールをご確認のうえ、お読みいただきますようお願い申し上げます。

こんにちは。濱野です。 更新が滞り、申し訳ありませんでした。シーズン前の今は各地で講習会やセミナーのご依頼を有難くも頂いて、UDCという組織として一年で一番忙しい時期です。そんな中、内川代表と映像制作会社の担当の方と三人で、10日の金曜日に3月発売予定のDVDの編集作業に立ち会うため、都内某所に出かけてきました。 テロップを入れてもらったり、音声に問題のある個所を修正してもらうのも、あっという間で映像プロの仕事に感服してきました。いよいよ製品らしい映像になってきました。皆様、三月中旬の発売を楽しみにお待ちください。 ■ クイズ118(ミドル)■ 走者1・3塁です。内野はスクイズ警戒で、二塁手・遊撃手もダイヤモンド内に位置していました。次の投球を打者が打ち、ゴロで一二塁手の間を抜きましたが、塁線の少し後方を走っていた一塁走者が打球を避けきれずにぶつかってしまいました。 1.打者にぶつかる打球を打ってしまった打者がアウトになる。ボールデッドとなり、三塁走者は三塁に戻される。 2.一塁走者がアウト。ボールデッドで三塁走者は三塁に戻される。打者は一塁へ。 3.ボールデッドとなり、一塁走者および本塁に最も近い三塁走者がアウトである。打者は一塁へ。 4.どの内野手にも守備機会が残されていないので、ボールインプレイである。 自分が審判であったらどう対処するか考えてみてください。 ○● 前回の回答(退場その3・監督編)●○ 【解説】 ————————————————————————————– STANDARDS FOR REMOVAL FROM THE GAME Umpires are entrusted with the authority to remove any participant from the game. This responsibility should never be taken lightly. While there are unique and extraordinary circumstances, players and clubs look for uniformity in applying consistent standards for ejection. The following general principles should be considered when deciding whether to eject a player, coach, manager or other person from the game: 1. Use of profanity specifically directed at an umpire or vulgar personal insults of an umpire are grounds for ejection. 2. Physical contact with an umpire is ground for ejection. 3. Refusal to stop arguing, and further delaying the game after the umpire has provided a player or manager adequate opportunity to make a point, is ground for ejection. The umpire should warn the player or manager that he has been heard and that he should return to his position or be ejected. Be firm and strong when warning the person, and avoid warning TOO SOON. 4. If a player, coach or manager leaves his position to argue balls and strikes (including half swings), he should be warned to immediately return or he will be automatically ejected. 5. Use of histrionic gestures (e.g., jumping up and down, violently waving arms or demonstrations) while arguing with an umpire, or stepping out of the dugout and making gestures toward an umpire, are grounds for ejection. Throwing anything out of a dugout (towels, cups, equipment, etc.) is ground for automatic ejection. 6. Throwing equipment in disgust over an umpire’s call may be a ground for ejection. In some situations, the umpire can warn the player and cause a fine to be issued for throwing equipment, but if the umpire deems the action severe, the umpire may eject the offender. 7. Any player, manager or coach who fails to comply with an order from an umpire to do or refrain from doing anything that affects administering the rules and regulations governing play is subject to ejection in accordance with Official Baseball Rule 9.01. Examples of this include failure to stay within the lines of the batter’s box after warning from the umpire, refusal to submit a piece of equipment for the umpire’s inspection, etc. While standards listed here may justify an ejection, Official Baseball Rule 9.01(d) grants umpire discretion to eject any participant “for objecting to decisions or for unsportsmanlike conduct or language.” In addition, thre are situations listed in the Official Baseball Rules and in other sections of this manual that result in immediate ejection. These situations include violations such as pitcher possession of a foreign substance, batter charging the pitcher with the intention of fighting the pitcher, pitcher intentionally throwing at a better, etc. 《拙訳》 審判員は試合の参加者を試合から除く職権を委ねられている。この責任は決して軽く考えられるべきではない。特殊で普通でない状況に於いても、プレイヤーやクラブは一貫性のある退場の基準の適用を求めている。 選手、コーチあるいは監督を退場にするかどうか決めるとき、以下の原則を考えるべきである。 1.特定の審判に対する口汚く罵る言葉を使うこと、あるいは審判に対する卑しい個人的侮辱は退場の対象となる。 2.審判に対する物理的接触は退場の対象となる。 3.議論を止めるのを拒絶するか、審判が選手や監督にある程度まで自分の意見を主張する機会を与えた後、更に試合を遅らせた場合は退場の対象となる。審判は選手や監督にきちんと聞こえるように、自分の元の居場所に戻らないと退場になるとの旨の警告をするべきである。警告するときは強い断固とした態度でいること。そして、早すぎる警告は避けなくてはならない。 4.選手・コーチ・監督がストライク/ボールの判定(ハーフスイングを含む)への抗議のために自分の居場所を離れたら、直ちに戻るように審判員に警告され、それを無視した場合は自動的に退場となる。 5.審判と議論している間に、芝居ががった大げさな身振り(飛び跳ねる、激しく手を振る、あるいはプレイを実演してみせる等)を使ったり、ダグアウトから足を出して審判に対して身振りを行う行為は退場の対象となる。ダグアウトからの物の投げ入れ(タオル、カップ、用具など)は自動的に退場となる。 6.審判の判定に対する反感から用具を投げつけることは、退場の対象になることもある。一定の状況では、審判は用具を投げると罰金の対象になる選手に警告を与えることもできるが、選手の行動が激しいと判断すれば審判員は違反者を退場にしても良い。 7.選手・監督・コーチが、ルールを施行することに影響する「何かをやりなさい」あるいは「何かを控えなさい」という審判員の命令に従わなかった場合は公認野球規則9.01に従って退場の対象になる。この例としては、審判の警告の後にも打者席を形成するラインの中に打者が構えるときに足を入れなかった場合、審判のチェックに対し用具を差し出すのを拒否した場合、等が含まれる。 ここに列挙された基準が退場宣告を正当化させるかもしれないが、公認野球規則9.01(d)は審判が「決定に異議を唱えた者や非スポーツマン的言動」をした試合の参加者を退場させることの自由裁量を認めている。これに加えて、公認野球規則やこの審判マニュアルに挙げられた幾つかの状況では、瞬時に退場となることもある。投手が異物を持っていたり、打者が喧嘩をする目的で投手に走っていったり、投手が故意に打者を狙って投球したりする行為などがそれらには含まれている。 ————————————————————————————– ————————————————————————————– 9.02(a)【原注】ボール、ストライクの判定について異議を唱えるためにプレーヤーが守備位置または塁を離れたり、監督またはコーチがベンチまたはコーチスボックスを離れることは許されない。もし、宣告に異議を唱えるために本塁に向かってスタートすれば、警告が発せられる。警告にもかかわらず本塁に近づけば、試合から除かれる。 ————————————————————————————– 今回も選択肢を一つずつ見ていきましょう。 「退場」に関するきっちりと明文化されたマニュアルがない以上、日本の審判の置かれている状況は当たり前であり、「退場が出せていないから駄目だ」などと私は毛頭思っておりません。ご理解頂きたいと思います。 1.判定の下した審判のところに来て、「その判定は間違いだ。」と言った。 監督がダグアウト(マイナーリーグの監督は攻撃中は3塁のベースコーチに立っていることも多いですが)から自分のところへ来たら、審判は、相手が何を言うかについて注意しなくてはなりません。どんなに相手が立腹した様子であっても、「その判定は間違いだ」という言葉では退場を出してはなりません。監督の批判の対象はあくまで「判定」であり、審判個人を侮辱しているわけではないからです。という訳で、答は「○」です。 2.判定を下した審判のところに来て、「へたくそ!」と言った。 日本語は時として主語が省略されますが、「へたくそ!」というのは多くの人はそれを言われた人に対する侮辱だと解釈するのではないでしょうか?審判個人に対する侮辱なので、答は「×」です。 3.微妙な投球判定の後に球審の所まで行って抗議をした。 「×」です。選択肢が誤解を招く表現になっていました。「微妙な」と付けてしまうと、「じゃぁ、明らかに審判が間違えたと思われる場合は球審のところまで行っていいのか?」と解釈されてしまいますね。上記の公認野球規則9.02(a)【原注】にある通り、駄目です。 4.判定に関して質問をして審判が説明を終えたにも関わらず、「納得する説明をしてくれ」と帰らなかった。 「×」です。上記マニュアルの3番に抵触します。説明とは、それを受ける側が納得できるまで行う側に要求できると思っている人が多いようです。。個人指導の塾や家庭教師なら、そこまでやるのが仕事でしょうが、野球の審判はそうではありません。 米国では、審判が一通り自分の見解を説明して、ある程度監督の言い分も聞いた後、審判が自分で時間を区切ります。多くの審判は”That’s enough.”(もう充分だ)と言って、それでも監督が言い分を述べるのを止めようとしなければ退場を宣告します。 5.判定を下した審判に向かって行って小突いた。 「×」問題外の行為です。マニュアルの2番です。 《まとめ》 今まで4回に亘って「退場宣告」を取り上げてきましたが、現場では正直なところ審判が判定を間違えたという理由から選手や監督が立腹するということはあると思います。「自分が間違えたのだから、酷いことを言われるのは仕方が無い」とか、「自分が判定を間違えておいて退場を出したら恥の上塗りだよ」と考えてしまうのが典型的な良識的な日本人ということになるのでしょう。私もセ・リーグにいた頃はそう考えていた(考えさせられていた)ので退場を出したことはなかったですし、現地で審判をするようになってからも、求められる「ある種の傲慢さ」を理解するまでにかなり時間がかかりました。 しかし、皆様もご存じの通り、日本の野球界も好むと好まざると「国際化」の波に揉まれています。 恥の上塗りの例(大きな音が出ます) 判定を出した瞬間、「あれっ?」って自分でも思ってました…。でも、アメリカでは、審判は上記の「恥の上塗り」が出来ないとダメなのだと思い退場を宣告しました。試合後、パートナーに笑いながら言われたのは、「It was a bad call but a good ejection.」(酷い判定だったけど、良い退場だったよ)ということでした。当然、退場をさせたチームの町の新聞には酷く書かれましたし、判定を間違えたことは反省していますが、一方で、このような場面で退場宣告ができて、パートナーからは評価してもらったので満足感もあったという変な気分でした。 国際化の波に揉まれているNPBの現場でもこれからは同じことが求められると思います。同じ基準で普段から試合をしておかないと、国際試合で「スポーツマンシップのない奴ら」とうしろ指をさされ、恥をかくのは選手です。日本の選手たちの恥は日本国民の恥であります。 私は現場の雰囲気を知っている(厳密に言えば、少なくとも9年前の現場の雰囲気)ので、国際的な基準をNPBに導入しようとしたときに、現場に立っている審判の皆さんにどれだけ大変な負荷がかかるか理解しているつもりであります。自分の実績を考えると、今現場にいる方々に対してどれだけ失礼なことを書いているかも分かっています。それでも皆様にゲームコントロールこそ審判の仕事であるということを理解していただくために書きました。 私たちができるサポートは「審判は判定を下すだけではなく、ゲームコントロールも大事」ということをまず理解することです。そのために特にプロ野球の審判には試合中は傲慢でなくてはならない場面もあるということを理解することです。マスコミ等のメディアの方々も勉強して頂きたいですが、まずは野球の審判である我々が、そのことを心から理解して上げることが大事だと思います。 ※各団体・連盟において上記と違う解釈をとる場合があります。ご確認下さい。 ★UDC野球ルールクイズ委員会