【第130回】それはペナルティなのか?

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最新のルールをご確認のうえ、お読みいただきますようお願い申し上げます。

こんにちは。濱野です。 前代表の平林さんが、先程事務所に現れて、昼食を御一緒しました。明日(19日)よりIBAF(国際野球連盟)主催の欧州での審判講習会(3日間)にNPBより派遣からの派遣で明日からイタリアのピサに行くとのことでした。皆様御存知の通り(?)私の方が先に欧州の野球を見てきたので、現地の映像などを平林さんに見せてあげました。良い予習になれば良いのですが。GG佐藤選手がイタリアのプロリーグで活躍中とのニュースも入って来ますし、ほぼ間違いなくスイスよりイタリアの方が野球の環境は良いでしょう。帰国後また、イタリアでの話を聞かせてもらいたいと思っています。 ■ クイズ130(ミドル)■ 今回は私が個人的に受けた質問から。 どこかのインターネットの掲示板で議論になっていた話だそうです。 走者二塁、投手がセットポジションに入ってから二塁走者の様子を見つつ、そのまま打者に投球しようと足を挙げました。しかし、打者は投手が二塁の方向を見ている間に球審にタイムを要求し、勝手に打席を外そうとしていました。審判はタイムを認めず、投手はそのまま投球を続け、それがワイルドピッチになり、二塁走者は三塁に進みました。守備側の監督が「投げようとしたら打者が外していたから投手が驚いてワイルドピッチになったんだ!」と抗議に来ました。球審として正しいルールの適用はどれでしょうか? 1.プレイは成立。監督の抗議を退ける。 2.監督の抗議は正しい。打者は打撃を放棄したのでその時点でボールデッドとなり、自動的にストライクが一つ増え、ボールデッドなので二塁走者の進塁も取り消される。 3.投球はボールだが、ワイルドピッチの結果進塁した走者を二塁に戻す。 4.打者が打撃を放棄したのでストライクにするが、走者の進塁は認められる 今日は選択肢を4つまで増やすだけの気力がありました。 間違いの選択肢を考えるのは結構難しいのです。 考えてみて下さい。 ○● 前回の回答(ルールブック原文を見てみましょう)●○ 正解は 2.そのままではアウトではない。(塁を離れている状況でタッグされればタッグアウト) でした。 《解説》 —————————————————————- 公認野球規則 7.08  次の場合、走者はアウトとなる。 (e)≪前略≫ しかし、進塁の義務の生じた走者が次塁に触れた後、どのような理由にせよ、その塁を捨ててもとの塁の方へ離れた場合は、再びフォースの状態におかれるから、野手にその身体または進塁すべき塁に触球されれば、その走者はアウトとなる。(このアウトはフォースアウトである) ——————————————————- 英語ではどう書かれているか見てみましょう。 —————————————————————- However, if the forced runner, after touching the next base, retreats for any reason towards the base he had last occupied, the force play is reinstated, and he can again be put out if the defense tags the base to which he is forced; ——————————————————- 英文解釈の授業のようになってしまい恐縮ですが、ついてきて下さいね。 キーワードは”retreat”という動詞です。”retreat”を英英辞書で引いてみましょう。 (http://www.thefreedictionary.com/retreat) 動詞としては「withdraw」「retire」と言い換えてありますが、それよりも分かりやすいのは名詞としての用法の解説です。 “going backward from a position gained” これを日本語に訳すと、「既に得ていた位置から後方に行くこと」となります。 これを踏まえた上で、前回の設問で紹介した会員さんの質問には、「立ち上がろうとした時に指先がベースから一塁方向に離れてしまいました。」とあります。 「指先がベースから一塁方向に離れてしまう」のは、「既に得ていた位置(二塁)から後方に行く」のとは同じでは無いですよね?「行く」というのは言い換えると「目的の地点に向かって移動する」ということです。 この単語の訳に規則委員会の方々も苦労されたのだと思います。 日本のルールブック本文にある「もとの塁の方に離れた」という文言を字面通りに解釈すると、設問の質問を寄せてくれた会員さんは正しいですが、その直前の「その塁をすてて」という方がニュアンス的には大事です。つまり、塁からほんの少し元の塁の方向に離れた程度ではその走者は再びフォースの状態に置かれる訳ではなく、原文の”retreat”「もともと居た位置に移動する」動作が走者に見られない限り、7.08(e)後段の状態にはなりません。 第118回(設問)http://www.umpire-dc.org/modules/d3blog/details.php?bid=169 (解説)http://www.umpire-dc.org/modules/d3blog/details.php?bid=170  でも取り上げましたが、日本の規則委員会の先生方は英語のニュアンスを日本語で表現することがとても苦労されているだろうなと心から思いますし、その仕事には感服いたします。しかし、原文を外国語である日本語に全て完璧に訳すというのは不可能に近く、時として日本語の表現が誤解を生んでしまうということもあると思います。 ですので、日本語のルールブックを読んでみて混乱が生じた場合は、軽い気持ちで辞書を片手に原文を当たってみたら疑問が解消できる場合もあります。UDCにてまだ在庫があります。 宣伝を抜きにして、会員の皆様には英語のルールブックもお持ちいただくことを強くお勧めいたします。 ※各団体・連盟において上記と違う解釈をとる場合があります。ご確認下さい。 ★UDC野球ルールクイズ委員会