【第80回】 BALK?or NO BALK? (ミドル)

ルール改正により、ルール・クイズ記事投稿時とはルールが変更されている場合がございます。
最新のルールをご確認のうえ、お読みいただきますようお願い申し上げます。

ゴールデンウィーク突入で本格的な野球シーズンとなり、皆様フィールドに立たれていることと思います。東北の方々も、落ち着いて審判に取り組める日が一日でも早く来ることを願っております。 皆様との約束通り何とか月曜日に更新したかったのですが、日付が変わって火曜になってしまいました。遅くなり申し訳ございません。 今回もボークか否かについてです。 ■ クイズ80(ミドル)BALK?or NO BALK?  ■ 走者二塁。投手は二塁に牽制球を投げようとしましたが、二塁ベースに二塁手と遊撃手のどちらもカバーに入っていませんでした。投手は定位置付近にいた遊撃手に送球しました。 さて、このプレイはアンパイアとしてどう判定すべきでしょうか? 1:ボークである。 2:ボークでない。 UDCの講習会でよく取り上げている話です。簡単かもしれませんが、ここをご覧の方の全員に我々の講習会に来ていただいているわけでもないでしょうから、難度のレベルはミドルにしておきます。 二者択一ですが、次回の解説文もちょっと長くなりそうです。何卒おつきあいください。 ○● 前回の回答(BALK?or NO BALK?)●○ 正解は・・・ 2:ボークでない。プレイは成立し、走者はタッグアウトとなる。 でした。 【解説】 ボークでないとの回答に不満を募らせている方々も多いことが予想されます。 今回はそういう方々の予想される反論を私なりに考えてみました。 その1 「投手が足を上げたということは投球動作に入ったということ。そこから二塁に投げたということは投球動作の変更となり、ボークのはずだ!」 ————————————————————————————– 8.05(a)投手板に触れている投手が、投球に関連する動作を起こしながら、投球を中止した場合。【原注】左投げ、右投げ、いずれの投手でも、自由な足を振って投手板の後縁を越えたら、打者へ投球しなければならない。ただし、2塁走者のピックオフプレイのために二塁へ送球することは許される。 ————————————————————————————– 設問のケースは走者単独一塁で、左投手です。もしこれが右投手なら、セットポジションからある程度の高さまで自由な足を持ち上げた時点で投球動作に入ったと言ってしまっても差し支えないでしょう。 しかし、左投手の場合は、上記【原注】を読むと分かりますが、セットポジションから自由な足を上げただけでは、投球動作に入ったとは言い切れないのです。自由な足が投手板の後縁を越えて初めてもう打者に投球するしかなくなりますが、実際は野茂投手のようなトルネード投法でもない限り自由な足が投手板の後縁を越えるのは難しいです。多くの上手な左投手はこの事実を利用し、牽制球を投げるのか、投球するのかギリギリまで分からない動作で一塁走者の動きを封じています。これらの行為によってボークを宣告されることはありません。 その2 ————————————————————————————– 8・05  塁に走者がいるときは、次の場合ボークとなる。 (d) 投手板に触れている投手が、走者のいない塁へ送球したり、送球するまねをした場合。ただし、プレイの必要があればさしつかえない。 【問】 走者一塁のとき、走者のいない二塁に送球したり、または送球するまねをしたらボークか。 【答】 ボークである。しかし一塁走者が二塁に盗塁しようとしたのを防ぐ目的で、第一動作で二塁の方向に正しく自由な足を踏み出せば、ボークにならない。なお投手が投手板を正規にはずせば、ステップをしないで送球してもかまわない。 ————————————————————————————– 上記のように、ランダウンプレイで一塁付近で走者がアウトになったということは、二塁でのプレイの必要は無かったことになる。ということは、8.05(d)の規定により走者のいない塁への送球でボーク! 確かに審判が考える基本的なプレイの定義は「ボール+ランナー」ということです。 そう考えると、この左投手の2塁への送球は走者のいない塁への送球と解釈できますね しかし、日本の「公認野球規則」の【問答】および【注】はあくまで、日本独自のもので、「Official Baseball Rules」には記載の無いものです。勿論ルール理解の助けになることの方が多い一方、時として困惑の原因ともなります 一方で、アメリカのルールブックの本文に載っている重要な文章が日本のルールブックでは抜け落ちていることがあります。8.05の【原注】に何故か日本のルールブックには載らなかった文があります。 ————————————————————————————– 8.05【原注】 ボークルールの目的は、投手が走者を意図的に騙そうとするのを防ぐためであることを、審判員は心に銘記しなくてはならない。もし、審判員の判断で投手の “意図” に疑いを抱いたら、審判員は厳重に規則を適用すべきである。 ここまでは日本と同じ文章が載っています。 以下、赤字で書いた部分の訳となるはずの文章が抜けています… However, certain specifics should be borne in mind: (a) Straddling the pitcher’s rubber without the ball is to be interpreted as intent to deceive and ruled a balk. (b) With a runner on first base the pitcher may make a complete turn, without hesitating toward first, and throw to second. This is not to be interpreted as throwing to an unoccupied base. (以下拙訳)しかし、以下の細目について心に銘記しておかねばならない。 (a)ボールを持たずに投手板をまたぐことは、騙す意図があると見なされ、ボークが宣告されるべきである。 (b)走者一塁のとき、投手は、一塁に投げようかと迷うことなく体を回して二塁に送球してもよい。これは、走者のいない塁への送球と解釈されるべきではない。 ————————————————————————————– 日本の規則委員会が意図的にこの文章を抜いたのか、単にミスで抜け落ちてしまったのかは分かりません。しかし、とにかく米国のルールブックには上記のように書かれています。(上記の【問答】を入れたから良いと思ったのでしょうか?) 上記(b)の文章に従えば、実際に二塁でのプレイが起こらなかったとしても、投手が二塁に送球する必要を感じて実際に塁間で何らかのプレイが発生したら走者のいない塁への送球とはならないということになります。 結論としては、上記の理由から足を上げてからでも一挙動でスムーズに二塁に送球すれば、ボークとは宣告されないと言うことです。上記日本のルールブック【問答】の「第一動作」とはそういう意味で解釈されるべきです。当然、一挙動と判断できないぎこちない動作ならばボークが宣告されて然るべきです。 というわけで、出題者濱野としては2:「ボークでない」を正解としますが、1のボークであるを選んだ方で、「出題文から察すると、投手が一挙動で二塁に投げていない」という理由を挙げた方も正解とも言えます。映像がないのでイメージの共有が難しいですね… ※各団体・連盟において上記と違う解釈をとる場合があります。ご確認下さい。 ★UDC野球ルールクイズ委員会