【第82回】第三ストライクを落球後… (ミドル)

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最新のルールをご確認のうえ、お読みいただきますようお願い申し上げます。

先週末の土曜日もUDCの会員の審判する試合の査定に出掛けました。査定が二試合目となる方は以前指摘したことをきちんと頭に念頭に入れながら試合に臨んでいる様子がはっきりと伝わってきて、私も嬉しく思いながら見ていました。クリニックに参加して頂けるのも勿論ありがたいですが、実際の審判の様子を査定して、その後に時間をかけて個別のフィードバックを出来るので会員様の満足度もより高いようです。勿論私、濱野は査定の場でも誰一人として罵倒などいたしません(笑)。是非一人でも多くのUDC会員の皆さんにこのような機会を提供できるように今後とも私も協力していきたいと思っております。 ■ クイズ82(ミドル) ■ 今回は私の実体験から出題することにします。2月のUDCスペシャルクリニックでも触れたのでご参加いただいた方には復習となります。参加いただけなかった方には難しい問題なので、間をとってミドルにしておきます。 二死走者2塁。フルカウントの後、ブレーキングボールを打者は空振りしました。しかし、投球はキレが良かったためショートバウンドし、捕手のチェストプロテクタに当たってホームプレートの上に転がりました。第3ストライクを得た打者は、捕手が投球を確捕していないのを見て走り出しましたが、ホームプレート上にあったボールを無意識に蹴ってしまい、ボールはダグアウト付近まで転がりました。この間に打者走者は一塁に、ニ塁走者は一気に本塁に生還しました。守備側の監督が血相を変えて出てきました…。 昨年、私が実際に経験したプレイです。 さて、このプレイはアンパイアとしてどう判定すべきでしょうか? 1:打者走者にアウトを宣告し、2塁走者の得点も認めない。 2:打者走者には一塁を与えるが、得点した二塁走者は三塁に戻す。 3:プレイは成立する。 考えてみてください。 ○● 前回の回答(ベースコーチと走者の接触について)●○ 正解は・・・ 3:プレイは成立し、3点が攻撃側に入る。 でした。 【解説】 ホームランの後に、攻撃側チームが大騒ぎしすぎることは打たれた投手や相手チームを蔑むことには繋がります。しかしそのようなスポーツマンシップの問題と野球という競技のルールを審判は混同してはなりません。 ————————————————————————————– 公認野球規則7・09  次の場合は、バッターまたはランナーによるインターフェアとする。 (h)3塁または1塁のベースコーチがランナーに触れるかまたは支えるかしてランナーの3塁または1塁への帰塁あるいはそれらの離塁を肉体的に援助したと審判員が認めた場合。 ————————————————————————————– 確かに7.09(h)ではどういう状況でベースコーチが走者に触れたときにアウトにすべきかは詳述していません。だからといって設問のケースに適用してアウトと言えるでしょうか? 我々の師匠ジム・エバンスがいつも言うのは、「Use common sense.(常識で判断しろ)」ということです。「書くまでもない当たり前のことはルールには書いていない」とも言っていました。 設問の状況は、既に打球は場外に消えボールデッドになっており、打者走者には本塁までの安全進塁権が与えられています。この状況でベースコーチが走者に触れたからという事実を持って「離塁を肉体的に援助した」とまでは言えません。 私も査定を終えて家に帰った後、何故そのような抗議があったのかと不思議に思い調べてみました。すると、どうやら過去に上記の規定を拡大解釈、つまりスポーツマンシップの問題とルールの解釈の問題の混同して本塁打を打った打者走者にアウトを宣告した事例が実際にあり、また本塁打の後のベースコーチと攻撃側プレーヤーとの接触を禁じるローカルルールを設定している団体も存在するようです。抗議に来た監督は、そのようなローカルルールを持つ団体で過去にプレイしていたのでしょう。 しかし、やはり通常の野球規則の解釈ではベースコーチと走者が単に触れただけで、その走者をアウトにすることは無理があります。7.09(h)のキーワードは「援助」です。ベースコーチが走者に触れた行為が結果的に「援助」となるためには、やはりインプレイの状態で、その走者に対する守備が実際に行われるか、まさに行われようとしていた場合に限られるはずです。例として映像を挙げておきます。 「ベースコーチが走者に触れた=アウト」ではありません。思考停止に陥ってはなりません。ルール各規定の意味を常に考えましょう。持っている野球の常識が問われています。 とは言うもののスポーツマンシップを会得させるために、このような行為をアウトとしている団体のその精神までは否定は出来ないなとも思うわけです。確かに、プレイが自分たちの思うように運んだときに喜びすぎるチームに対しては私も「いい加減にしろ」と思ってしまうこともありますが、だからといってスポーツマンシップとルールの適用はやはり別の問題として取り扱わなければならないでしょう。 ※各団体・連盟において上記と違う解釈をとる場合があります。ご確認下さい。 ★UDC野球ルールクイズ委員会