【第87回】守備妨害?(エキスパート)

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最新のルールをご確認のうえ、お読みいただきますようお願い申し上げます。

濱野です。18日の土曜日に、UDCの総会に初めて出席しました。過去4年のこの時期は渡米中で、出席しようにもできませんでした。マイナーリーグをクビになったのは誠に不本意で、未だに納得できていないところもあるのですが、この時期に正会員の皆様とお会いできたことは喜ばしいことだと思っています。「ルールクイズ楽しみにしています!」という声も何人かの方に直接かけていただいて嬉しい限りです。読者からのフィードバックは励みになります。 ■ クイズ87(エキスパート)■ 今回は第84回の捕手のヘルメットの解説で取り上げた映像に関する質問をある会員様から頂きました。とても良い質問だと思うので、皆様とシェアさせてもらおうと思います。 映像の状況を整理すると、無死走者二・三塁。打者 Pujols が遊撃手後方にフライを打ち上げました。その際、スイングのフォロースルーが捕手の頭を直撃し、捕手はプレイできない状態になっています。 そして頂いた質問は、「もしこの状況で三塁走者がタッグアップして本塁に突入していたら、捕手は野手からの送球を処理できず、容易に得点できたはずです。それでは守備側にあまりに気の毒な気がします。打者が投球を打って、その後、打者が捕手を叩いたときは何かの処置が必要なのではないでしょうか?」 素晴らしい質問です。 さて、審判としてはどういう措置をすれば良いでしょうか? 1:捕手には気の毒だが、インプレイの状態が続く。 2:守備妨害で、打者をアウトにする。 3:野球規則6.06(c)を適用し打者の妨害とはしないが、三塁走者・二塁走者の進塁は認めない。 考えてみてください。 ○● 前回の回答(走塁妨害)●○ 正解は・・・ 3:ボールインプレイであるので、”That’s nothing!”のコールをする でした。 もしかして、皆さん驚いていますか? 【解説】 ————————————————————————————– 公認野球規則 7・06 オブストラクションが生じたときには、審判員は “オブストラクション” を宣告するか、またはそのシグナルをしなければならない。 (a) 走塁を妨げられた走者に対してプレイが行なわれている場合、または打者走者が一塁に触れる前にその走塁を妨げられた場合には、ボールデッドとし、塁上の各走者はオブストラクションがなければ達しただろうと審判員が推定する塁まで、アウトのおそれなく進塁することが許される。  走塁を妨げられた走者は、オブストラクション発生当時すでに占有していた塁よりも少なくとも一個先の進塁が許される。  走塁を妨げられた走者が進塁を許されたために、塁を明け渡さなければならなくなった前位の走者(走塁を妨げられた走者より)は、アウトにされるおそれなく次塁へ進むことが許される。 ————————————————————————————– 上記の公認野球規則7.06の私が赤字にした部分をそのまま読むと、今回の設問のケースは「一塁に到達前のオブストラクション」だから即ボールデッド、打者走者に一塁を与えて、一塁走者は二塁だろうな…ということになるのでしょう。 ところが、、、、 マイナーリーグの全審判必携のPBUC Umpire Manualの、78頁にあるPlay1を見ると、 ————————————————————————————– Play 1: Runner of first base; batter-runner gets in rundown between home and first. Can obstruction be called going back to home? Ruling 1: No, unless the obstruction is intentional. NOTE: In situation where the batter-runner retreats and reaches home plate, he shall be declared out. 《拙訳》 プレイ1:走者1塁で、打者走者に対する一塁本塁間での挟殺プレイとなった。打者走者が本塁方向に下がって来たときにオブストラクションのコールは為されるべきか? 回答1:その打者走者に対する妨害が故意であるとき以外は、オブストラクションをコールすべきではない。 ノート:打者走者が本塁方向に逆走してきて、本塁に到達したらアウトが宣告される。 ————————————————————————————– 設問では、後ずさりしてきた打者走者にぶつかった捕手は、たまたまそこにいたのです。ということは故意に打者走者を妨害したわけではありません。ということで意外かもしれませんが、正解は3です。 打者走者が一塁到達前に逆走するということは、その打者走者はセーフになるという意志がないというふうにも解釈できます。ということは、一塁到達前の逆送という行為は走塁行為とは呼べるものではなく、故に走塁妨害も成立しないという論理です。 今回の設問は、一塁到達前にボールを持たない野手と打者走者が接触しているのに、オブストラクションB項的扱いにもならない例外的なケースです。前回の出題が「スーパーエキスパート」だったのに比べれば易しいかもしれませんが、この問題は「ミドル」というには難し過ぎたかもしれません。 公認野球規則7.06(a)の、「打者走者が一塁に触れる前にその走塁を妨げられた場合には、ボールデッドとし」という一文には、今回取り上げた例の他に、B項的な扱いになる例外が二つあります。どちらも即ボールデットとはならずに、先に”That’s obstruction!”とコールしておき、成行きを見る必要がある場合です。(PBUC Manualをお持ちの方、77頁です) 第一に、打球が飛球(ライナーも含む)になって、その飛球が捕えられる前に打者走者が守備側プレーヤーに妨害された場合です。飛球が捕えられれば打者アウトになります。 第二は、打球がフェアかファウルか決まらない時点で、打者走者が守備側プレーヤーに妨害された場合です。打球がファウルとなれば、打者には一塁は与えられずに打ち直しとなります。 皆様が忘れた頃に上記二つの例外に関するクイズを出そうと思います。 ※各団体・連盟において上記と違う解釈をとる場合があります。ご確認下さい。 ★UDC野球ルールクイズ委員会