【第96回】ハーフスイング(ミドル)

ルール改正により、ルール・クイズ記事投稿時とはルールが変更されている場合がございます。
最新のルールをご確認のうえ、お読みいただきますようお願い申し上げます。

こんにちは。濱野です。昨日、会報の発送準備作業を事務所で一人で黙々とこなしていたところ、複数の会員さんがわざわざお手伝いに来ていただきました。おかげ様で作業がはかどったばかりでなく、皆さんと談笑しながらの楽しいものとなりました。ありがとうございました。 ■ クイズ96(ミドル)■ 今回のクイズはルールというよりは、審判が行うべき手続きの問題です。 選択肢も設けません。自分が審判としてその場面に遭遇したらどうするか、どうすればトラブルを防げるかを考えてみて下さい。 二人制審判です。走者一塁。打者のカウントは3ボールズ1ストライク。走者が二塁に盗塁を試みました。その投球を打者はハーフスイング。球審の投球判定は「Ball. No, he didn’t go!」しかし、捕手は走者をアウトにしようと二塁に送球しました。走者が二塁に到達するより早く二塁でタッグを受けました。ここで、守備側ベンチから「スイング!」との声が上がりました。 さて、審判としてはどのような手続きをとるべきでしょうか? 特にあなたが塁審だったらどうすればトラブルを防げるかを考えてみてください。 ○● 前回の回答(投球当時とは…)●○ 正解は・・・ 2:三塁である でした。 —————————————————————- 公認野球規則 7.05次の場合、各走者はアウトにされるおそれなく進塁することができる。 (h)一個の塁が与えられる場合  打者に対する投手の投球、または投手板上から走者をアウトにしようと試みた送球が、スタンドまたはベンチに入った場合、競技場のフェンスまたはバックストップを越えるか、抜けた場合。この際はボールデットとなる。 —————————————————————- ということで、皆様ご存じのように投手の投球がボールデッド地域に入ったわけですので、「投手の投球当時」がその走者の進塁の起点に一つの塁が走者に与えられます。しかし、公認野球規則は「投球当時の塁」が、投手が投手板についた時なのか、セットポジションをとった時なのか、投球を動作を開始した時なのか、実際にボールが手から離れた瞬間なのか、はっきりと書いてありません。 しかし、アンパイアマニュアルには明示されています。 —————————————————————- 6.7 TIME OF PITCH The time of pitch is defined as the moment the pitcher’s movements commit him to deliver the ball to the batter. In a windup position, this is defined as the moment the pitcher begins the natural movemant associated with his delivery of the ball to the batter(i.e., the start of his windup or delivery). From a set position, this is defined as the moment the pitcher begins the natural movement assciated with his delivery of the ball to the batter after the pitcher has come set with both hands together in front of his body. A runner who advances while the pitcher is in contact with the rubber is considered to occupy the base last touched at the time the pitcher initiates his actual pitching motion to the batter. The pitching motion is defined as any movement which commits the pitcher to deliver the ball to the batter. As long as the pitcher is not committed to pitch, a runner may advance and is considered to occupy the last base touched at the time the pitcher initiates his actual delivery to the batter. The preliminary motion known as the “stretch” is not considered the start of the pitching motion. 「投球当時」とは、投手がその動きにより、投球以外できなくなった時のことである。 ワインドアップポジションでは、投球に関連する自然な動作を開始した時、(つまり、ワインドアップあるいは投球動作の開始時) セットポジションからは投手がセットポジションに入って両手を身体の前で合わせた後に、投球に関連する自然な動きを始めたときである。 投手が投手板に着いている間にに進んだ走者は、投手が実際にピッチング・モーションに入ったときに、その最後に触れたベースを占有したものと見做される。ピッチング・モーションは投手が打者に投球するしかなくなったと判断できる動作によって判断される。 投手が打者に投球せざるを得なくなっていない限り、走者は進塁してもよく、また、投手が実際の打者に対する投球を始めたときに触れていた塁を占有していたと見做される。 「ストレッチ動作」として知られている準備動作は、ピッチングモーションの開始とは見做されない。 —————————————————————- ということで、「投球当時」とは投手が打者に投球する以外できなくなった瞬間を指します。設問のケースでは、「投球する腕をゆっくりと大きく後ろに引いた時」のことを指します。(投球する腕を後ろに引くと同時に、普通は、自由な足が打者に向かって踏み出されます。よって「自由な足が打者に向かって踏み出された瞬間」でも良いでしょう。) 「投手板についた時」「セットポジションに入った時」「自由な足をあげた時」これらの時点では、まだ塁に送球する可能性が残っているので、投球以外の動作もできるわけです。つまり、これらは投球当時とは言えません。しかし、腕を大きく後ろに引いた瞬間、に打者に投球することが確定しました。こうなってから塁に送球したらボークですよね。。リリースの瞬間を待つまでもなく、完全に投球してくることが確定した、この瞬間が「投球当時」です。設問のケースでは、腕が投球のために後ろに引かれたときには占有していた塁は「2塁」となりますので、その塁を基準として「一個の塁が与えられる」のですから、走者に与えられる塁は「3塁」となります。 この設問に関連して、複数の方から「私たちの団体では投球当時を『投手が軸足を投手板上に位置したとき』にしています。」という声を頂きましたが、そうすると不合理が出てきます。 不合理の例その1 9回裏走者一・三塁。三塁走者はサヨナラの走者で、内野陣は極端な前進守備態勢に入りました。投手が投手板に触れてセットポジションをとった後、二遊間がセカンドベースのカバーに入らないと見た一塁走者は二塁にスタートを切りました。投手はセットポジションのまま、その様子を見ましたが何もできませんでした。一塁走者が二塁に到達した後、投手は打者に投球しその投球がファウルになりました。 →投球当時が『投手が軸足を投手板上に位置したとき』であるならば、既に二塁に達した走者はファウルが打たれた後、投球当時の塁、即ち一塁に戻らなくてはなりません。おかしいと思いませんか? 不合理その2 一死二塁。左投手が捕手のサインを見ている間に三塁にスタートを切りました。全く予想していなかった投手は走者をアウトにすることを諦めてそのままセットポジションに入りました。その間に二塁走者は三塁に到達。そして投手はそのまま打者に投球し、打者は大きな外野フライを打ち上げました。既に三塁に到達していた走者は三塁で正しくタッグアップして本塁を踏みました。 →投球当時が『投手が軸足を投手板上に位置したとき』であるならば、既に三塁に到達していた走者のタッグアップの起点は二塁となり、二塁でアピールされたらアウトになってしまいます。おかしいと思いませんか? 以上のように、投球当時を『投手が軸足を投手板上に位置したとき』とすることには合理性が全くないと言わざるを得ないでしょう。日本の野球規則、細則ともに「投球当時」の定義を明らかにしていないので、100パーセント間違いとは言い切れませんが、理屈に合わず不合理であるということは間違いありません。 何度も言うように、野球競技のグローバル化を進めなくてはいけません。そして野球競技はアメリカから輸入された競技です。ルールの解釈も同様であるべきでしょう。とはいうものの、後は下の※の注意書きの通りです。皆さんの所属の団体でよく話し合ってください。 ※各団体・連盟において上記と違う解釈をとる場合があります。ご確認下さい。 ★UDC野球ルールクイズ委員会