【142回】マイナーリーグの宿題(その2)

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最新のルールをご確認のうえ、お読みいただきますようお願い申し上げます。

こんにちは。濱野です。 一昨日のパリーグの首位攻防戦で私にとっては興味深いシーンがありました。 試合の流れとは全く関係ありません。 ライオンズの打者のヘルマン選手に投球が跳ね返って、球審の白井君にも投球が当たっています。 打者に投球は斜に当たったので、投球の運動エネルギーをまともに受け止めてしまったのはヘルマン選手でなく、むしろ球審の方だと思います。 同様のケースがアメリカで起きたらどうなるかの比較です。 日本ではホームチームであるライオンズのベンチからトレーナーらしき人が二人(外国人選手なので、もしかすると一人は通訳の方かもしれません)ベンチから出てきましたが、二人ともヘルマン選手のところへ行きました。映像からは誰も、球審のケアをしに行った様子は見えません。(最後に渡辺監督が声をかけている様子は伺えましたが。) 球審は痛んでいるのに放っておかれる。日本ではよくある風景ではあります。私の日本での現役時代でも処置をしてくれたチームもあるにはありましたが、五回終了後のグラウンド整備の間や試合終了まで待たされることが殆んどでした。 対してアメリカでは、(守備側チームがホームチームだったということもありますが)すぐにホームチームのツインズのトレーナーが球審のクロフォードさんのところに向かっています。これはMLBだけのことではありません。 私が日本のプロ野球を去って、マイナーリーグのエクスデンディッド・スプリングトレーニングで初めてアメリカのプロ野球の審判をしたときです。今回映像で取り上げたケースと同じように打者のアームガードを掠めた投球が私の上腕に当たりました。その場で一瞬うずくまってしまいましたが、日本では「審判が痛んで試合を中断させるということはあり得ない」と教育されてきたので、その感覚で我慢して試合を続けようとしました。 しかし、当たった様子を見たトレーナーがすぐにやって来て、「いいから見せて!」と強めの口調で言われ、彼はその場で上腕の当たった箇所をテーピングでぐるぐる巻きにしてくれました。「これで腫れないはず。試合後に氷を渡すから取りに来て」と応急処置を施してくれて試合を再開しました。両チームとも待っていてくれるし、考えてみれば、人として当たり前ですよね。 アメリカのプロ野球では、ホームチームのトレーナーに審判のケアをする義務があります。トレーナーに見てもらったら審判自身もマイナーリーグの本部にレポートを提出する義務があるし、またトレーナーも同様のレポートを送付します。このように制度として審判は守られているので、試合中、安心して仕事に取り組むことができます。 またアメリカ野球の捕手は概して投球がどのようなものであれ、後ろに逸らすことは悪いと教育されているので、結果的に懸命に審判を守ってくれようとします。それが審判と捕手との信頼関係となり、球審は投球判定に集中できます。 対して、日本では自分が怪我をしたくないからなのか無走者のときは特にショートバウンドの投球を触ろうともしない捕手すらいます。こうなると球審は投球判定どころではなくなってしまいますよね。 痛んでいる審判が放っておかれる日本の現状は、そのままその地位の低さを表しています。公認野球規則9.02(d)には以下の記述があります。「試合中、審判員の変更は認められない。ただし、病気または負傷のため、変更の必要が生じた場合はこの限りではない。」選手は交代できますが、審判は基本的に交代できないのです。野球の規則からも試合中に生じた怪我について審判と選手とどちらを大事にしなければならないかは明らかだと思うのですが、如何でしょうか? 日本のプロ野球にも審判を怪我から守る仕組を作ることが今すぐ必要だと思います。 ■ クイズ142(ビギナー)■ 今回もプロの審判に出された宿題の続きです。 走者一塁二塁。ダブルスチールがかかっていたが、次の投球は捕手のシンガードに当たってファウル地域を転々とし、三塁側のダグアウトに入ってしまった。ボールがダグアウトに入ったときには、二塁走者は既に本塁を踏んでおり、一塁走者は三塁に立っていた。正しい裁定はどれか? 1.プレイは成立。二塁走者は得点、一塁走者は三塁。 2.二塁走者、一塁走者ともそれぞれ三塁、二塁に戻される。 3.二塁走者の得点は認められるが、三塁まで達した一塁走者は二塁に戻される。 4.どちらの走者にも本塁が与えられ、得点となる。 プロに出される問題も、易しいものもあります。前回同様、根拠となるルールブックの条項も見つけて下さい。 ○● 前回の回答(マイナーリーグの宿題(その1))●○ 正解は 3.捕手の打撃妨害である。一塁走者は二塁へ。打者は一塁が与えられる。 でした。 ≪解説≫ ——————————————————————————– 公認野球規則 6.08(c)捕手またはその他の野手が、打者を妨害(インターフェア)した場合。  しかし、妨害にもかかわらずプレイが続けられたときには、攻撃側チームの監督は、そのプレイが終わってからただちに、妨害行為に対するペナルティの代わりに、そのプレイを生かす旨を球審に通告することができる。  ただし、妨害にもかかわらず、打者が安打、失策、四死球、その他で一塁に達し、しかも他の全走者が少なくとも一個の塁を進んだときは、妨害とは関係なく、プレイは続けられる。 7.04次の場合、打者を除く各走者は、アウトにされるおそれなく一個の塁が与えられる。 (d)走者が盗塁を企てたとき、打者が捕手またはその他の野手に妨害(インターフェア)された場合。 【注】本項は、盗塁を企てた塁に走者がいない場合とか、進もうとした塁に走者がいても、その走者もともに盗塁を企てていたために次塁への進塁が許される場合だけに適用される。しかし、進もうとした塁に走者があり、しかもその走者が盗塁を企てていない場合には、たとえ盗塁行為があってもその走者の進塁は許されない。また単に塁を離れていた程度では、本項は適用されない。 ——————————————————————————– 上記、6.08(c)をぼんやりと読んでしまうと、監督が「打撃妨害を無かったことにして得点を選ぶ」と言えてしまいそうな気がしますが、それはできません。監督が打撃妨害でプレイの選択ができるのは打者が妨害されながらもバットにボールを当ててフェアの打球を打った場合のみです。(ファウルであっても、フライアウトを利して走者が進塁した場合もあります) 設問の場合のように打撃妨害のために、打撃そのものができなかったときには、ボールデッドとなり打者には一塁が与えられます。この設問中では一塁走者は盗塁を企てていたと書いてあります。7.04(d)の規定の対象となりますが、打者が一塁を与えられるので一塁走者は盗塁を企てていたか否かに関わりなく二塁が与えられることとなります。 -PR-その場での質問はできませんが、一度のクリニック受講料より安いです。こちら -PR-