【156回】投手のペナルティはボークだけ?

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最新のルールをご確認のうえ、お読みいただきますようお願い申し上げます。

あけましておめでとうございます。濱野です。 皆様良い新年を迎えられたことと思います。ちなみに私は書き初めの代わりに傷んだ木製雨戸のペンキ塗りをしました。4歳の息子が(やはり思った通りに)ペンキの缶をひっくり返して幸せな年明けでした。 今年は、UDCのノウハウをより多くの方々と共有できるサービスを新たに企画しております。何とか年度が変わる時期くらいには、具体的な形にしたいと思っています。本年も宜しくお願いいたします。 ■クイズ156(ミドル)■ 走者一塁三塁。投手はセットポジションです。投手は投手板上に立ち、両手を体の前で合わせました。この姿勢から、軸足を外しました。しかし両手は体の前で合わせたままです。そして、投球する手をグラブから離さないまま、再び軸足を投手板に戻しました。 審判員はどのような、措置を取るべきでしょうか?アメリカ野球の審判になったつもりで考えて下さい。 1.軸足を外して、投球する手をグラブから離さなかった時点でボークを宣告 2.軸足を投手板上に戻した時点で、タイムを宣告し投手に両手を離すように警告。 3.軸足を投手板上に戻した時点で、ボークを宣告 4.特に違反はないので、プレイ続行。 考えてみてください。 ○● 前回の回答(次打者は誰?)●○ 正解は 3.ボークではない。プレイ成立。 でした。 ≪解説≫ 設問では、走者が三塁に走りそこでプレイが実際に起きています。投手はアピールプレイも含めてプレイの必要があれば投手板上から「走者のいない塁への送球」したとしてもボークを宣告されることはありません。 投手が偽投の出来る塁に一旦ステップして、その塁と違う塁に送球するには、違う塁の方向にステップをし直さなくてはなりません。(最初のステップの結果、軸足が投手板上から外れた場合はこの限りではないことは言うまでもありません)軸足が投手板から外れないとボークになるのは、その「違う塁」が一塁のときです。なぜなら、一塁への投手板上からの送球は一挙動で一塁に直接ステップして行なわれなくてはならず、違う塁に先にステップし、その後軸足が投手板上から外れていないということは、結果的に投手板上からの一塁への送球が違う塁にステップしてからの送球になるからです。 設問のケースでは、投手は先に二塁にステップして、走者が三塁に走ったので三塁にステップし直して送球しています。二塁も三塁もともに投手板上からステップしても実際に投げることを要求されていない塁なので、軸足の位置は問題にはなりません。野球規則を見てみましょう。 ——————————————————————– 公認野球規則 8.05(c)投手板に触れている投手が、塁に送球する前に、足を直接その塁の方向に踏み出さなかった場合。 【原注】投手板に触れている投手は、塁に送球する前には直接その塁の方向に自由な足を踏み出すことが要求されている。投手が実際に踏み出さないで、自由な足の向きを変えたり、ちょっと上にあげて回したり、または踏み出す前に身体の向きを変えて送球した場合、ボークである。投手は、塁に送球する前に塁の方向へ直接踏み出さなければならないが、踏み出したからといって送球することを要求されてはいない(一塁についてだけは例外)。  走者1・3塁のとき、投手が走者を三塁に戻すために三塁へ踏み出したが実際には送球せず(軸足は投手板に触れたまま)、一塁走者が二塁へ向かって走っているのをみて一塁へ振り向きざま踏み出して送球することはさしつかえない。しかし、走者1・3塁のとき、投手板に触れている投手が、三塁に踏み出してすぐ身体を回して一塁に送球することは、一塁走者を騙す意図が明らかであり、また、このような動きでは現実に一塁に送球する前に一塁へ直接踏み出したことにはなっていない。したがって、このような行為は、ボークを宣告されるべきである。  投手が三塁へ踏み出したあと、軸足を投手板から後方にはずせば、一塁へ振り向きざま送球してもボークとはならない。 【注】投手が三塁へ踏み出して腕を振って送球する動作(偽投)をした勢いで軸足が投手板からはずれた(場所の如何を問わない)場合には、そのまま振り向いて一塁へ送球することは許される。 ——————————————————————– 8.05(c)【原注】の中段以降の文章は、書いてある通りに走者一塁三塁の状況のときの話です。しかし、「さしつかえない」と書かれてあるすぐ後で、「ボークを宣告されるべきである」。投手の似たような行為の結果に、全く正反対のことが書いてあります。 規則委員会の先生方には申し訳ないですが、少し難解な書き方が為されていますね。 このような日本のルールブックが良く分からないときは、原文に当たってみるのが一番です。 ——————————————————————– It is possible, with runners on first and third, for the pitcher to step toward third and not throw, merely to bluff the runner back to third; then seeing the runner on first start for second, turn and step toward and throw to first base. This is legal. However, if, with runners on first and third, the pitcher, while in contact with the rubber, steps toward third and then immediately and in practically the same motion wheels and throws to first base, it is obviously an attempt to deceive the the runner at first base, and in such a move it is practically impossible to step directly toward first base before the throw to first base, and such a move shall be called a balk. Of course, if the pitcher steps off the rubber and then makes such a move, it is not a balk. ≪拙訳≫ 走者が一塁三塁にいて、投手がリードしている三塁走者を脅して三塁に戻すために三塁にステップして、そして一塁走者が二塁の方向に走り出したのを見て、体を回して、一塁にステップし投げる、これは可能である。しかしながら、走者一塁三塁のときに、投手板に触れたまま、三塁にステップして、すぐにほぼ同じ挙動で(三塁方向にステップした足を軸にして)体を回して一塁に投げる、これは明らかに一塁走者を騙そうとする試みであり、そしてこのような挙動では実際に一塁に投げる前に一塁に直接ステップするということは不可能であり、ボークが宣告されるべきである。投手が投手板を後方に外したうえで、このような動きをしたとしてもボークではないのは言うまでもない。 ——————————————————————– 三塁方向から振り向いて、一塁に牽制球を投げるときに「合法」なのは、三塁にステップして(「偽投」(腕を振る動き)は米国の解釈では特に要求されていません)、体を一塁方向に回すときに軸足が外れ、今度は一塁方向にステップし直して投げるというものです。 軸足が外れていないと、投手板上からの一塁への牽制球を一挙動でない動きで行なったことになるので、ボークになります。この事実を日本のルールブックの【注】は指しています。 一方、「違法(ボーク)」となるのは、投手板上の右投手が自由な足を三塁方向にステップして、一塁方向にステップし直すことなく、体だけを回して一塁に投げる動作を指しています。 ※各団体・連盟において上記と違う解釈をとる場合があります。ご確認下さい。 ★UDC野球ルールクイズ委員会